首都機能移転問題

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                 目次
    前段
  1. どのような首都がイメージされているか
  2. 「魅力ある首都」を、新しく原野の中に創ることが現実に可能か
  3. なぜ「首都移転」が必要か(その論拠は的を得ていない)
  4. 比較考量は同じレベルで
  5. 東京の問題
  6. 新しい首都の建設<新首都東京2300計画>-日本の首都の提案
  7. 21世紀から始まる2300年構想としての新首都東京2300計画
  8. 新首都東京2300計画は国を創ることの出発点
  9. 日本再生のための首都計画2000−2300


 

前段


政府は2010年に新しい首都において国会を開催する方針で首都移転計画を進めています。現在、移転候補地が3個所にしぼられ、1999年末にはそれ を1個所にしぼり、2000年には現首都である東京と比較考慮して、どちらか一方に決定し事業を実行に移す、ということです。しかし、候補地を西へ もってゆくか、東にするかを国会で決めるのは非常に難しく、2003年の国会では、候補地の絞込みを先送りしました。棚上げにしたと等しい状況です。

日本の首都を問題にするというのは、単に、国会を開くという一つの機関の在り方を問う(首都機能移転)のみでなく、日本が、21世紀、またそれから先の何世紀もの間、どのような首都を持つか、ということが大前提であることはいうまでもありません。来るべきグローバリゼーションの時代では一地域の問題が直ちに世界中に波及していきます。「魅力ある首都」を持つことは、その国の顔を創ることであり、武力に頼らないもっとも強い国力を持つことになります。

このような前提に立ち、現在進行中の首都移転計画を検証すると大きな問題があり、疑問を呈さざるを得ません。




 

1.どのような首都がイメージされているか


首都機能移転という言葉に表されるように、国会だけの移転では首都としての幅広い機能は満足されず、「魅力ある首都」からはほど遠いものです。イメージが創られていません。過日、新聞紙上に新国会の一例としてドーム型の絵が紹介されていましたが、国会をバブル型(空気膜構造また、ガラスドーム)のドームでイメージするとは、なんとも皮肉なことです。

「魅力ある都市」として世界中から人々が集まってくるような典型的な首都をイメージすること、そして、その実現に向かって進んでいくことが必要です。




 

2.「魅力ある首都」を、新しく原野の中に創ることが現実に可能か


結論からいえば不可能です。

イ.財政上の問題
計画されている14兆という財政支出は国会を開催するためだけのインフラおよび施設のコストです。多くの要素が複合集積し、初めて魅力を発揮する「首都」を新たに創るには考えられないほどの膨大な規模の国家財政の支援が必要になります。(無から創るわけですから) もし、このようなプロジェクトが着手されたなら、泥沼に予算をつぎ込むような結果になります。土地の手当て、インフラの整備を経て立ち上げるまでのコストが非常にかかるということです。
ロ.建設期間の問題
国会議事堂のみを建造するなら10年という単位でよいでしょう。しかし、国会、最高裁、官庁を含めた首都機能を移転するとなれば就労人口、 その家族、そして周辺人口を加えれば30万人の大移動を行うことになります.このような新都市が都市らしい姿を現すには長い年月と歴史を必要と します.それは近世において計画された首都キャンベラ、ブラジリア、そしてワシントンなどをとってみても歴然と判明することです.ブラジリ アの建設がはじまる前に、100年にわたる準備期間があったのです.首都をつくるには100年を越える長い期間が必要です.しかも、新しいそれ らの首都は必ずしも成功したものとみられていません. 200年300年にわたる市民の営為によって、豊かな魅力ある都市ができあがるのですが、新 しい首都が成熟する200年300年を国際社会は待ってくれるでしょうか?20世紀は国際社会の安定(民族の問題を積み残していますが冷戦の解消等) と自由主義経済の展開の時代でした.来る世紀は、都市文化を競う21世紀であり、豊かな美しい首都が国の顔として国際社会の中でコミットメント してゆく22世紀を迎えます.そのような時に、のんびりと新首都をつくる時間的余裕があるのでしょうか?首都移転が実行に移されても、当分の間 は(200年以上)は後進的な未熟な首都の姿を国際社会の中に曝すことになります.新首都が成熟するまでの数百年を国際社会は待ってくれません. 都市をつくるとなれば100年が単位となり、それが、魅力あるものとして成熟するには、さらにその数倍の300年以上がかかるでしょう。 変化の激しい、 活発な行動が要求されるグローバル社会にあって、これでは時間がかかりすぎます。300年の長期ビジョンを持つことは重要なことですが、それと、 現実に建設をすることは別で、機能が早急に発揮される必要とからめて、それらを長期ビジョンに整合させなければならないのです。
ハ.建設主体の問題
現在の、日本の政府機構の中には、「魅了ある首都」としてのビジョンを描く機関がありません、都市全体を統合的に設計する部門がないのです。 都市、土木、建築などの分野が縦割りで、バラバラで全体の絵を描きイメージをつくる機関がないのです。都市を設計することは、統合デザインを行う ことであり、縦割り行政ではまったく無理なのです。 パリ、ベルリン、ロンドン、東京など、現在魅力ある都市は、封建時代に強力な権力によって統合 デザインされました。そのことが魅力を発揮する下敷になっています。 比較的新しいキャンベラやブラジリアなども、時の強力な権力によって都市設計 が行われました.新しい都市をつくることはよい意味での強力なコントロール(権力といってよいでしょう)が必要とされるのですが、現在の日本の 政府や機構の中にはセクショナリズムが強く、一つの統合された都市を描く力を持つ優れた機構はありません. 民主時代では、新しい統合デザインの 方法が求められなければなりませんが、そのような方法、機構は未だ現れていません。「魅力ある都市」を統合デザインする方法が現在の日本にはない のです。その機構を先ずつくらなければなりません。



 

3.なぜ「首都移転」が必要か(その論拠は的を得ていない)


首都移転の賛否を論ずる前に、根本命題である「なぜ国会移転(首都移転)が必要か・・・」ということを検討すべきです.私には、その 必然性が理解できないのです.現在の国会周辺、皇居を含んだ首都機能域は、他国の美しい首都、パリ、ロンドン、ベルリンなどと比較して遜 色のない見事な景観を持ち、日本国民の胸中にその美しさは焼き付いています.このような美しい首都をなぜ捨てるのか...どうしても理解 しがたいことです.古くからの市民の愛着によって育てられ、成熟した都市環境を保存再生し、新しいものと共生させながら現代都市を創ってゆ く、というのは世界の趨勢です.ヨーロッパやアメリカの住みやすい美しい都市は全て、そのような思想に支えられて存在しています.G7(G8)の諸国 の首都で移転が論じられているところはありません.ドイツも再びベルリンに首都機能を集めようとしています.
そこで、考えられる移転理由を挙げ、検討してみましょう.

第一は、東京への過度の集中を避けるためという理由があります.
過度の集中によって東京が混乱の状況を呈しているのは集中の仕方が悪かったからです.一方、集中したことによる東京の利点や評価にも耳を傾けるべきです.都市が都市らしくあるためには数多くの要素が(文化、経済、娯楽、歓楽、住居、生産など、それら全てのものが)集中することが必要なことです.戦後の日本は経済の活性によって国際的な存在を認められてきました.そのような経済の活性は東京圏への政治・経済・金融・文化などの集中によってもたらされたものであり、一極集中の問題は、国会移転などによっては軽々に排除することのできない、次元の異なる都市問題なのです.首都が持つべき内容(範囲)と、東京という都市の持つ内容(範囲)を混同していることによる間違いがあります.首都移転を考える前に、首都と東京の定義づけを明らかにしなければならないと考えます.
現在の首都機能は移転しなければならないほどの悪所ではなく、世界的にも美しい、見事な都市景観を持っているのです.国会から皇居・江戸城にかけての景観は世界に比類のない美しい景観であり、江戸開幕以来500年の歴史によって熟成された価値のある景観です.この美しい首都を他へ移して、跡地をどうしようとするのでしょう.パブリックスペースの豊かな現首都機能域が、ゆくゆくは悪しき東京化、そこから逃げ出そうとしている現在の東京と同じような都市と化してしまうのがおちです.
過密の問題を指摘されているのは、山の手線の外側の地域ですから、首都機能を移転することによって解決される問題ではありません.  集中を避け るならば、国の政治の中心となる首都機能ではなく、中央省庁の中に存在しながら地方政治と密接な関係を持つ省庁や部局を移転することです. そのことによって地方分権の実行にはずみをつけることです.小さな中央政府、そして豊かな地方政府という思想に支えられた東京改造論が検討される べきです.

第二は、東京が防災に欠けているという理由が挙げられます.
震災に対する危惧であります.大災害を予想して首都が逃げ出す(移転という言葉は使いません、災害を予測して移るということは逃げ出すことですから)という理由は解せません.残された1000万都民はどうなるのでしょうか?そのような危惧があるならば首都移転に国費を投ずるよりも、防災対策に走るべきです.耐震的な都市構造を目標として道路やインフラの補強を行い、建物の耐震強度の高基準化をなすことが先決ではないでしょうか.
現在の首都機能を受け持つ建物(国会・最高裁判所・警視庁など)は、建築基準法で示されている耐震基準を遥かに越えた耐震設計によって建設されています.また、建物の質も200年以上にわたる寿命に耐えられる質を与えられています.現首都機能の容器である主要官庁の建物は阪神大震災のような決定的打撃を受けることはありません.首都機能域である東京山の手は関東ローム層の良質な地盤、そして、断層のない地盤に乗っています.江戸はそのような良質な地層の上に礎かれているのです.かつ、関東平野を控え、川、穏やかな海(東京湾)を抱いて、都市をつくる上では最良の条件に恵まれています.他の場所、例えば富士火山帯、三陸地震帯、東海地震帯、那須火山帯などに近い富士山麓、仙台周辺、那須などへ移転しても、そこが震災を受けないとは限りません.東京よりもさらに大地震に遭遇する確率度が高い恐れも生じます.災害に対する恐れを理由にして首都を移すという理由は見当はずれです.

第三に、政治改革、官僚組織の改造のために新しい容器を用意するということまでいわれます.
これも納得できない理由です.容器を変えてよくなるものでしょうか.新都市に建てられる軽薄な容器(国家財政からみて、現在ではそのような建物しか建てることができないでしょう)に盛られる中身は、あまり期待できない気がします.むしろ他力に頼らずに、自ら政治改革、行政改革をなすべきです.移転すべきは国会や最高裁判所、首相官邸のような、国家の政治を司る、中心的な首都機能ではなく、地方と関係を持つ行政各省庁が分散し、地方分権の一翼を担うべきでしょう.中央政府は小さな政府として現在の首都機能域の中で再整備すべきです.

以上首都移転に対する三つの理由に反論を加えましたが、それは現在の首都(国会、皇居周辺域)が他国の首都に比肩するすばらしい環境を持っているためです.ロンドン、パリ、ベルリンなどの歴史的首都は次世代に向かって、さらにすばらしい首都としての再整備を行っています.日本の首都はそれら諸外国の首都に遅れをとるわけにはいきません.来るべき世紀には、国際関係の中で日本は明らかなコミットメントを主張する立場をとらなければ国際社会の中に互して行くことはできないでしょう.そのような折に後盾となるのが首都の様相です.国際的に認められる(評価される)首都を日本の顔として、持ちたいものです.そして政府は国際社会に対して良識のある毅然とした姿勢を示してもらいたい.日本にとってもっとも重要な首都を、より豊かに整備するために遅滞は許されません.

現在の美しい首都機能域(国会周辺)を中心にして日本の顔である首都東京(それは東京都を意味しません.もっと狭い範囲で、山の手線の内側の面積に等しいくらいの範囲)を再整備することが唯一可能な方法であると確信します.美しい既存環境を活用することは効果的です.首都機能はそのままにして、周辺機能のみを整備するわけですから移転によるよりも遥かに短期間に、しかも少ない費用で新しい首都を整備することができます.それは首都経営のコストが安くつくということです.ワシントンが国家機関の多い行政都市であるために市財政が弱く、厖大な国家予算が年々投入されているなどの事実を認識する必要がありましょう.新首都に関してはその建設費(イニシャルコスト)のみでなく、都市運営のための経費を税金によってまかなわなければならぬという問題も重要な論点となります.
現在の、皇居を中心とする美しい首都機能域を整備する方向をとるならば、都市にとって必要な歴史を継承することができます.500年の歴史によってすでに蓄積された東京の都市文化との連繋を図ることができます.このような理由から首都移転には賛成できかねます.日本の首都は東京において再整備されるべきであるし、また、その方法はあると考えます.
魅力ある美しい首都を創ることは21世紀において日本の存在を高めることであり、それが何ものにも代え難い日本の安全保障の証しとなるものであると信じます.




 

4.比較考量は同じレベルで、「時間の幻影」


1999年末に移転新首都と東京とを比較考量して最終的に首都計画の方向を決めるという政府方針です。このような比較考量は同じ時間レベルで比較されなければならないのは当然です。

イ.比較対象としての新首都
比較対象となる新首都は「緑の中に高層ビルが建つ(そのコンセプト自体がすでに時代遅れの旧いもの・・・)」あるいは「低層の建築物で構成され、周囲を山々が囲み、森が点在し・・・」というようにイメージが極端にブレながら、すでに新首都が建設されたものとしての都市像を描いています。前述のように、そのイメージは200年後、あるいは300年後に到達するであろう姿です。 2000年時点でのレベルでは、移転新都市は道路や下水もない原野、山林であるわけです。 では、2100年はどのような姿か、また2300年はどうか・・・というように、同じレベルで比較考量されるべきです。
ロ.比較対象としての東京
首都移転問題の発端は東京がかかえる諸問題でした。東京は指摘されるように多くの問題点を持っています。100年後、200年後、もし、東京がそれらの問題点を解決する施策を実行し続けてさえいれば、問題点は十分修正されます。一方、2000年時点をレベルとすれば、すでに、東京は十分に首都機能を果たしています.また、皇居、国会周辺の景観は世界に誇り得る美事な景観です.双方の同時レベル(2000年,2100年,2300年)の姿を比較するのでなければ比較考量にならないということです.
ハ.首都東京はどこか
首都東京の領域を明確にしないで首都論が行われるというのは奇妙なことです.山手線の内側(都心3区又は都心5区)を首都というべきです.(山手線内はパリと同じ面積)山手線の外側は首都ではありません. このように領域を定義づければ、現首都は夜間人口の少ない過疎地域です.また、国会周辺、中央官衙街や都心地区は新しい耐震基準による耐震構造によって建てられた建物が多く、防災上の問題の少ない地域です.とくに、皇居周辺地域は世界各都市でも類をみない、誇るべき美観環境であり、世界遺産に登録されてもおかしくない景観を持っています.勿論、山手線の外側地区に存在する諸問題が改善されなければならないことはいうまでもありません.



 

5.東京の問題


首都移転の理由として、一極集中、過密、過疎、災害、遠距離通勤、経済活性、行革の新しい器づくり、人心一新等々多くの問題が指摘されています.しかし、このような問題は現在の首都東京(その領域は前述のように曖昧)に対するものでしょうか.これら多くの問題が都心の首都領域に対するものではなく、東京の周縁部(山手線外側)に対する問題です.

青島都政時代、「首都問題審議会」の専門委員をしていた折に、東京都の事務局に、「首都東京を問題とするのだが、首都東京はどの範囲か」と尋ねると「サァー」という答えが返ってきました。「山手線の内側ぐらいの範囲だろうか・・・」というと、「イヤー、隅田川まで入れてよいのではないか」というのです。東京都都市計画局ですら首都東京の範囲をとらえていないのです。首都東京の領域も定かでないまま、首都東京を論ずるというのでは議論になりません。「首都移転論」が如何に論拠の危ういものであるかを示すものです。

このように見てくると、先ず、東京の中で首都東京の領域を明確に設定し、それと、多摩までを含む広域都市東京とを区分することが必要です.

次いで、首都東京の整備と、多摩までを含む東京(それは地方都市東京といってよい)の改造とを同時に進行させることが、進展のめまぐるしいグローバル社会にあってもっとも現実的であり、かつ、未来へのビジョンをも併せ持った「魅力ある日本の首都」を描くことのできる方向です.




 

6.新しい首都の建設、<新首都東京2300計画> −  日本の首都の提案


国際社会の中で魅力ある新首都東京を新たに、都心の首都機能領域と東京湾岸に展開する領域を併せて首都と制定する.この、ヤジロベエ構造 の新首都東京を日本の顔として整備していく.この計画は現在すでに首都機能を持つリアル都市と、東京湾岸の水域上に展開する領域のみが描かれ たバーチャル都市との組み合わせによって構成されるところが、システムマスタープランとして面白い.バーチャル都市部分は長い年月(たぶん300年 ぐらい)をかけて魅力ある姿を現していくでしょう.

この計画はまた、東京湾ウォーターフロントの環境保全、湾岸自治体による独自性そして、相互にバラバラな計画を統合するコントロール、人工島造成によるゴミ処理場の確保、職住近接の新しい都市を創ることによる理想的都市住居の建設、災害に対する安全性、インフラのみでなく上部構造(建築)をつくることによる都市産業の活性、東京湾全域にわたる調整機能等々、単に首都機能移転にとどまらず、多くの重要な問題を解決する多角的な効果を持つものです.

総理直轄として、このような「新首都東京2300計画」と地方分権計画(道州制等)とを同時に併せ進行させることによって、21世紀以降、日本の発展が好ましく明るく展開することを確信するのです.







 

7. 21世紀からはじまる300年構想としての新首都計画2300


300年にわたって順次つくられる(人口減少の時代によってはつくられないかもしれませんが)埋立島の建設可能床面積5,760haということは、 都心23区の業務用床面積の総計が3,000haといわれていることに比して膨大な面積であり、これだけの床面積が現時点の社会経済状況において直ちに求 められているものではありません.したがって、このような、建設を可能とする開発可能面積は、将来の予備面積として担保される貴重な素材なのです. 大東京圏のしっかりした都市計画に準拠する再構成のための準備面積として、逐次活用していくためのストックです.活用の目的の一つは集中を続ける 大東京圏の受け皿としてです.他は旧都市域の再開発、再整備のための打って返しを可能とする予備スペースとして有効に活用するためです.しかも そこに創られる都市は300%環境容積による都市であるために、好ましい定住都市としての、永続性を担った環境になります.これが既成市街地に影響 を与えないはずはありません.例えば、戦後初期に建てられた公営・民営の共同住宅はそろそろ寿命を果たし、建て替えられなければならない時期に なりつつあります.量を求められた当時の膨大な住居を建て替え、質量ともに備わった良好な住環境を創る、すなわち安定した定住環境を創るためには、 広大な建て替えのための土地を必要とします.それには、東京湾ベルト地帯のヴァーチャル都市に準備された開発可能床面積は最適の用地となるわけです.しかも、そこに実現 される職住・文化、レクリエーションなどの混在する豊かな都市環境は、必ず21世紀の都市環境の考え方に好ましい影響を与えることとなりましょう. むしろ、好ましい都市環境として既成市街地に、この300%環境容積計画手法がフィードバックされるように務めなくてはならないでしょう.
このような旧市街地再生計画のためのフィードバックを誘発しながら、埋立によるベルト地帯の新しい都市が創られていくには、100年単位を繰り返す長い歳月を費やすことになるでしょう.そのような長期的視野に立つ定まった目標が見据えられなければ、次世代に残せる国づくりは不可能である、と考えます.
簡単に記してしまえば莫大な費用のかかる膨大な計画ではあるけれども、100年200年単位の計画であるとすれば、年間の建設予算としては3,300億円〜7,300億円(埋立4,800ha、建設床面積5,760ha)の計画であり、十分計画可能なものです.
都市には廃棄物処理(ゴミ処理)がつきまといます.焼却に応じきれない量が海域の埋立にまわされます.また港湾には浚渫土の処分がつきまといます.現に浚渫土は多くの埋立地を生んでいます.このような、港湾都市につきまとう影の部分(これまではそのように考えられていた)を日の当たるプロジェクトに転化することが、より効率のよいサイクルシステムに合致した計画となり、大東京圏の再生につながるわけです.ナショナルプロジェクトとして国費を投じても、大東京圏を次世紀のモデル都市とすることは、日本の国際社会に対する役割であると考えます.

この計画はまた東京湾環境破壊に対する歯止めの計画です.国土的転換のコントロールの下で東京湾自体の自然再生(ミティゲーション)の役割を担います.
海域の再生による自然に包まれ、国際化される政治機能を中心に職住近接、適正容積密度の空間に恵まれた都市環境を持ち、豊かな歴史と文化に裏付けられた新しい首都が東京湾に生まれます.

さしあたっては、このようなあたらしいベルト地帯によらなくとも現時点で活用し得る埋立地は東京湾岸にいくつか存在しています. 例えば横浜新港地区、川崎沖埋立地、東京13号地・有明埋立地、浦安・幕張周辺地区、千葉埋立工業用地等々いくつかのポイントは埋立島の代換として挙げることができます.これらを公有地として据置き、<300%都市構想>として活用するならば、本計画は緒についたということができましょう.

この新しい首都は、高いビジョンとレベルを保持するのと同時に、実現可能な首都計画です.(財政難の現時点には領域決定という、首都制度のみをスタートさせることのみで事業は動き出す.)この計画を発足させることは国民に夢を与え、経済の活性にもつながることであり.ナショナルプロジェクトとするに相応しい計画です.

国では行政改革、地方分権、財政改革、経済対策などのプロジェクトが進行していますが、<新首都2300計画>はそれら全ての構造改革に密接にからむ、日本の国土再生計画に結びつけられるべきのもです.このようなトータルにとらえた総合計画が今後の日本を創るために求められています.




 

8.新首都東京2300計画は国を創ることの出発点


私たちは多くの職業に従事しています.物をつくる、情報を扱う、芸術をつくり、建築をつくる等々、それらの人々の諸活動によって生産、 商業、文化などの社会活動が営まれ、私たちの社会が形成されることになります.全ての個人の営みが社会をつくる原動力であり、その在り方 によって、文化に富んだ豊かな社会、すなわち定住環境が創られてゆきます.それは国を創ることと密接にからんでいることです.
しかし、それぞれの職についている人たちは、その限られた分野の中で、専門的視野に縛られながら、そこの範囲の知識を極めることに腐心しています. いわゆるタテ割り社会が生じるわけですが、この傾向は行政機構にもっとも顕著に現れます.都市計画の分野でいえば、それは土木系が専門とする分野 であり、道路や都市下部構造(インフラストラクチャー)の計画が実現すれば都市計画がなされたと理解された時代が長く続いていました.そしてそこに 敷かれた区画割りの上に思い思いの建築が建てられました.それは用途地域制などの規制にしたがったものではありますが、その結果は都市の混沌をも たらすのみであったことは、すでに多くの人々が指摘するところです.都市はその上部構造(建築)如何によって美しくもなり、混沌としたもの ともなるということがようやく分かってきました.しかし、上部構造のみの力によってそれが達成されるものでもありません.下部構造と上部構造が 調和し、相まって美しい定住都市を創るのです.タテ割り組織とヨコ割り組織とをひとつの織物として組織する(都市化する)ことによって達せられる 目標が定住環境であり、魅力的な都市なのです.

同様のことが、社会のあらゆる面においてみられます.最近の政治についても、とくに指摘されるべきことでしょう.私たちが政治に期待するものは、国家形成の政策を世に問い、それを実行に移す行動であります.複数の、政権担当能力のある政党による政治を目指す選挙制度改革は、国を治める大きなねらいを持つ行動として国民の支持を得ました.それは実現に向かって動き出していくでしょう.しかし、次の大きな目標は日本という国をどのような国にしていくかという国づくりの基本的哲学を基礎に据えることではないでしょうか.それを出発点としてさまざまな政策が支持されるべきです.ところが、現状は経済、国際関係などの緊急課題が目前に迫り、目前の問題に対処することのみに追われて、根本的な思想が政策から欠落してしまう・・・・そのような状況は政治の分野も他の分野も変わりません.

基本は祖先を敬い、国土、環境を愛する人心を取り戻すことではないでしょうか.そのために、営々として国づくりに励み、歩んできた先人たち(祖先)の業績を評価し、その徳を偲び敬うことのできる、恵まれた環境の国土を創ることです.先人たちが築いてきた環境を、それが美しいものとして、豊かなものとして、また我々が享受し、愛し、評価し、そして子孫に残していくべきものとして、そのような国土を創っていくことです.その目標の上に全ての方策がとられるべきではないでしょうか.単に経済の繁栄や技術の進歩などの物質的繁栄を意味するものではなく、もっと遠くの大きなところに視点をとらえるべきであると考えます.

都市・建築の分野では雄大な都市開発をねらうのではなく、落ち着いて住みやすい、人心を和ませる都市環境を創ることです.その結果としての都市創造は、振り返ってみれば実に雄大な都市創造であり、国土を創ることであったということになります.




 

9.日本再生のための首都計画2000−2300


  • 日本が、夢と希望のある明るい国として栄えるために、長期にわたる(2000年〜2300年)ビジョンを立てる。
    このような具体の目標をもつことは重要である。目標に向って諸政策を統合し一歩一歩近づいてゆく。
  • 先ず、国際化(グローバリゼーション)の時代を迎えて、誇りある発信の出来る、美しい首都を持つ。
  • 一方、地方分権を進め、住み良い定住環境を全国に展開する。
    それらの諸都市は風土に慣染み、歴史を伝承し、それぞれ個性ある定住環境として整備される。
    また、情報革新(ハイテク)によって大都市生活者と同質の情報享受に恵まれる。
    このような意味において町村の生活は定住都市と同質化していく。
  • 美しい首都、住み良い(定住)都市をもつことは国民生活の基本的条件である。
    この実現のための骨格づくりはベーシックテクノロジー(ロウテク)によるものであり、官民一体となって進める都市産業ととらえる。
    公共投資、民間投資は都市産業に対して投下される。
    それは経済活性化への道でもある。
  • 東京湾を広場とする新首都東京
  • 新首都東京を州都とする広域首都圏(関東州)
  1. 東京湾

  2. 東京湾横断道路(アクアライン)

  3. 首都東京(水域都市)

  4. 首都東京(既存都市)

  5. 地方分権にもとづく定住都市

  6. 都市間に残された自然