2.もう一つのパラダイム

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平成7年度の経済企画庁の資料に日本が当面する5つの構造改革問題が取りあげられています。

  1. 高度情報産業の育成
  2. 雇用の不安の解消
  3. 少子高齢化社会への対応
  4. 豊かさの実感できる社会への対応
  5. グロ−バル社会への対応

の5項目です。

第1の高度情報産業の育成と第2の雇用以下の項の間には大きな断絶点(クリティカルポイント)があります。
第1項は現代のハイテク産業の育成とその成果品に対する社会的対応です。21世紀の経済は高度情報産業が、世界をリ−ドするハイテク産業として重要なテ−マとなりましょう。20世紀では自動車やAV機器などが社会をリ−ドする産業であり、大量生産を目的としたオ−トメ−ションが製造業を支配しました。その結果、この分野での雇用は駆逐されたのです。ハイテク産業の振興と雇用増大(又は確保)は矛盾するテ−マです。それを同列にして問題とすることはできません。その間にクリティカルポイントがある由縁です。
第2項の雇用、、第3項の少子高齢化(それは医療、福祉、そして我々の日常社会生活に関係します。)第4項の豊かさの実感しうる社会・・・これらは私達の日常の生活環境に関わることです。
第1項はハイテクノロジ−の領域であり、ヴェンチャ−技術によって日進月歩の発展をしていきます。今日の先端技術は明日には時代遅れのものとなり、又、次の日にはどのような新しい技術がヴェンチャ−されるか分からない・・・という将来の姿を描くことのできない領域です。将来にわたる計画、マスタ−プランを立てられない領域です。マルチメディア界で現実になりつつあるのは、極めて少数の勝者が巨万の富を独り占めにし、残る大多数は勝者の持つ技術に使われるという勝敗の明瞭な世界です。

このような性質を持つ領域は私達の日常の生活とは分けて考えられるべきです。私達の生活する領域(それをハイテクノロジ−領域に対してローテクノロジ−領域と名付けます)では、老若男女が平等に平和な生活を送り、共に豊かさを実感するような場(都市)を創るのです。ハイテク領域とは決定的に異なる性質をもつローテク領域には、それを"創る"ための新たな方法(歴史を遡れば、それは日常のものでありました)が必要です。それは統合の手法です。"新たな住みよい、豊かな都市を創る"ために統合的に諸問題、諸政策をまとめていくということです。
勿論、ハイテクノロジ−はそれはそれとして発展させなければなりません。日本が国際社会の中で成り立つには、そして国の隆盛をはかるにはハイテク領域である高度技術を進歩させ、高度産業を振興させなければならないことは云うまでもありません。このようなハイテク領域とローテク領域を明瞭に分け、それぞれに最適の解決を与えるという視点がこれまでの政治、行政、産業、金融など全ゆる分野において欠けていました。これまでは、思いつき的に目の前に現れた問題のみを処理するという場当たり的な施策がとられていました。それが現在の政治、行政、社会の行きづまりを生みました。このような決定的な構造劣化に対して大いに改革の気運は盛り上っています。行革、財政再建、経済の活性、地方の振興等問題は山積しています。
これらを個々に解決しようとするのではなく、統合的に解決するには具体的に"ものを創る"ということをテ−マとしてとりあげることです。その主軸となるのは"国土を創る"という問題を中心に据えることです。
明治維新に相当される国を再興する時代に当り、"国創り"の視点が求められるのは当然です。

現在の日本の経済はハイテク領域に属する産業(国際的に展開している情報産業や製造業)の健闘に支えられています。これに対比して国土に密着した産業(不動産、建設、物販等)は極めて低迷した状態です、統計に現れている経済指標が横ばいという状況は、ローテク領域の産業の低迷をハイテク領域の産業の隆盛が底上げしている結果です。ハイテク領域の産業の隆盛を差し引けば、ローテク領域における産業の衰退は目を覆うばかりです。従って、これら二つの領域は別個に統計されねばなりません。そうしないと実態が見えてこない。
国際社会の中で日本をしっかりと存在せしめるためには、ハイテク産業を大いに育成し、成長させなければならないことは論ずるまでもありません。日本の存在はこの分野の成否にかかっています。
ところで、20世紀のハイテク領域の雄であった自動車産業の隆盛によって、製品としての自動車台数は幾何級数的に増大しました。その結果、都市には車が溢れ、本来"人間が住むため"であった都市構造が破壊されました。車の問題を解決するために様々な方策が考えられ、多大の投資がなされましたが、未だにこれという解決には行きついていません。21世紀の高度情報産業に関しても、その発展膨張がローテク領域である私達の生活環境(都市)を蹂躙してしまうのではないか・・・その恐れは十分にあるわけで、それを避けるためにもハイテクとローテクの領域間の臨界点(セーフティネット)を見極め、ローテク領域の統合的建設を行っていく必要があります。



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